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幼い頃、昼間に起きた嫌なことはそのまま悪夢となって夜も繰り返された。 その日は親戚が集まって、新築のお祝いがあった。 その席で出された料理を私はあまり好きではなく、どうやって残そうかと周りの大人の様子を伺いながらビクビク食事をした。 その夜に見た夢は手に巨大なナイフやフォークを持った、目玉の大きな種類のよく分からない白い動物たちが追いかけてきた。 大きな声で腕を高くあげて追いかけてくる動物。 こんな時に限ってうまく走れない。転んだらどうしよう、どうしよう。 「ねぇ。起きて、起きて。」 姉が心配そうに私をのぞき込んでいた。 「こわいゆめ みた?」 私の首の後ろの汗を拭きながら、姉は尋ねた。 「うん・・・。」 再び布団に横になったが、また夢を見そうで恐いと姉に言うと 「じゃあ、手をつないで寝よう。」 つないだ手から悪夢がうつるから二人ならきっと恐くないよ、姉はそう言った。 手の温かさにほっとした気持ちになって、まぶたが重くなっていく。 夢の中にちゃんと姉も来ていた。 手を離さないように気を付けながら歩いていくと、例の動物たちが現れた。 走って逃げようとする私を引き留めて、姉は動物たちに丁寧にお辞儀をした。 低いうなり声を上げていた動物たちも、私たちにお辞儀を返した。 「そちらのお嬢さんはお昼の料理に出された私らを食べなかったんですよ。」 「美味しくなかったのか。」 「お腹が痛かったのか。」 「いろいろ聞きたかったんです。ところがお嬢さんは走っていってしまった。」 「私らは嫌われているんだって、皆がっかりしてました。」 てきぱきとお茶の準備をしながら、そう動物たちは言った。 怪物たちとにこやかに談笑しながら、姉は 「ね、恐くないでしょ?」 そういってに私に微笑みかけた。 二人で見る夢はいつも楽しいものだった。 姉が独立していくとき、私を置いていくんだという卑屈な気持ちから一日中姉を避けて、電気もつけない階段で階下の両親と姉の笑い声を聞いていた。 ふと、階段の電気がついて姉があがってきた。 うつむいて、懸命に姉を無視しようとする私の頭をなでて、 「大人になれば恐い夢なんか、なくなっちゃうわ。 それまでは、お日様のあがる方を向いて『この夢、貘にあげます』っていうの。 そしたら貘が夢を食べてくれる。その夢はもう見ないよ。」 私もその後、何年かして親元を出て行った。 姉は大人になれば悪夢なんか見ないと言ったが、今でも私は悪夢で夜明け前に目が覚める。 現実と悪夢の距離は近づいて、夢で見たことが現実に起こりそうで気が滅入る。 あの時姉がいれば、どう答えたのだろう。 きっと、もっと良い結果になったはずだ。 そんな、どこにも行き着かない答えを探そうと考え込んでいると、窓から光が差してくる。 光をみつめたまま、現実が悪夢に近づかないように唱えてみる。 「貘にあげます。貘にあげます。」
by tana_suna
| 2006-04-08 14:27
| 創作小話
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